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大学と地域の繋がりを創る、九大伊都 蔦屋書店プロジェクト

 

 

企画会社CCCがこれまで手がけてきた企画の数々。

そんな一つひとつの企画の裏側に隠された「一人のアイデアがやがて事業へと成長するまでのストーリー」に光を当て、お伝えする「#キカクノキッカケ」。

今回は、2023年4月に福岡県の福岡市西区九大新町にオープンした、「九大伊都 蔦屋書店」プロジェクトに関わった3名のインタビューをお届けします!

 

今回の社員

佐久間 崇さん:

1998年4月に新卒でCCCに入社。入社後5年間店舗勤務。その後中四国・九州エリアでSV・TL(チームリーダー)・支店長・支社長を経験。「TSUTAYA福岡天神」のリニューアル、「福岡市スタートアップカフェ」、「TSUTAYA BOOKGARAGE福岡志免」、「六本松 蔦屋書店」の立ち上げに関わる。その後「九大伊都 蔦屋書店」のオープニングプロジェクトに発足時から参画。入社以来25年間、一貫してTSUTAYA事業に関わっている。

村上 友子さん:

2012年4月に新卒でCCCに入社。「TSUTAYA天神駅前福岡ビル店」、「TSUTAYA BOOKSTORE TENJIN」、「TSUTAYA BOOKSTORE福岡空港店」でBOOK担当を勤めた後、BOOK FT(フィールドトレーナー)に。現在は「九大伊都 蔦屋書店」でBOOKを担当。

管 光晴さん:
大学生時代にTSUTAYA香里園店(大阪府)にアルバイト入社。「TSUTAYA福岡西新店」移籍後、九州支店(当時)の契約社員採用で入社。最初の2年間はTR(CD/DVD販売)地域MDを担当し、その後「TSUTAYA天神駅前福岡ビル店」のTR/イベント担当、「TSUTAYA福岡西新店」店長、「TSUTAYA  BOOKGARAGE福岡志免」副店長/文具雑貨を担当。2021年より「九大伊都 蔦屋書店」オープニングプロジェクトに参画。現在は、Afford株式会社に出向し、九大伊都 蔦屋書店の店長兼文具雑貨リーダーを担当。

 

(左から)村上 友子さん、佐久間 崇さん、管 光晴さん

経験の積み重ねから作りあげる、新店舗の立ち上げPJ。

――みなさんが、CCCに入社を決めたきっかけは何でしたか?

佐久間:入社試験の面接にて、自分らしく会話をしたのですが、そんな自分を受け入れて「CCCに来ない?」と人事の方が言ってくれたので、自分自身が自分らしく仕事をできる会社なのかなと思ったからです。

:「TSUTAYA香里園店」でアルバイトをしていた時代に、当時の担当社員と連携して仕事をしていくなかで、売場作成や商品の発注にとてもやりがいを感じ、その仕事を社員としてもっと幅広くやってみたいと思ったのが最初のキッカケです。
その後、「TSUTAYA福岡西新店」でのアルバイト時代に契約社員採用の話を頂き、入社しました。

村上:学生の頃から映画が好きだったので、当初は映画に関する事業に携わりたいと思っていました。就職活動をしていた頃、参加した会社説明会の増田社長(現・代表取締役会長)の話を聞いてCCCはTSUTAYA事業だけでなくポイント事業やマーケティング事業など多岐にわたる事業がある「企画会社」と聞いて、面白い会社だなと思い、入社を決めました。

 

――入社前や入社してからの経験が、今回のプロジェクトで生きた瞬間はありますか?

佐久間:今回のプロジェクトは、福岡市による公募案件で、まずは獲得しないと実施できないというのが前提だったので、絶対に公募を通さなければなりませんでした。その際に役に立ったのが、行政に対してどんな提案をすれば公募に通りやすくなるのかというイメージ。福岡市による公募案件である2014年にオープンした「福岡市スタートアップカフェ」を担当していたので、そのイメージは何となく持っていました。

 

――同様の案件を一度ご経験されているということですよね。

佐久間:そうですね。ただ、今回の「九大伊都 蔦屋書店」は、公共事業ではなく、民間事業として、西部ガス都市開発株式会社様とのジョイントベンチャー(以下JV)として「Afford株式会社」を立ち上げ、運営を行っています。他の企業様と会社を作り、店舗運営をすることは、今までTSUTAYAのフランチャイズ事業(以下FC事業)に長く携わってきた経験が活かされていると思います。

新店舗の企画という面では、「TSUTAYA BOOK GARAGE福岡志免」、「六本松 蔦屋書店」の立ち上げ時に、リーダーのサポートとして動いていたので、それらの経験が役に立ったと感じています。

九州で10年間さまざまな経験をしてきましたが、今回のプロジェクトは自分自身の経験の総決算として取り組めたと感じています。

 

――村上さんも福岡空港での店舗立ち上げに携わっていたものの、今回のプロジェクトは想像以上に大変だったとお聞きしました。以前の店舗立ち上げとはまた違った大変さはありましたか?

村上:「TSUTAYA BOOSKTORE福岡空港店」を立ち上げる時は、スタッフの人数や、売り場の規模がコンパクトだったため、自分でコントロールできるところが多かったです。

今回は、坪数も倍以上になり、スタッフの人数も多く、“蔦屋書店”というブランドを作り上げながら、人材の育成をするのはなかなか大変でした。
また、先ほどお話しした通りJVで取り組む店舗となるので、加盟企業様と一緒に店を作り上げるというところが今までと大きな違いであり、努力した点だったと思います。

 

:私も、佐久間さん、村上さんと同様で今までのひとつひとつの経験が積み重なって役立てたと感じています。TR(CD/DVD販売)のMDをやっていたことや、FC加盟企業様への対応、店長経験、また文具雑貨の担当等、過去の仕事からの繋がりも活きていると感じます。

大きなお店を立ち上げるという経験がなかったので、ゼロから店を立ち上げて運用を作り上げ、回していくというところが苦戦したところで、現在も日々奮闘しています。



協業企業と作り上げる施設、CCCとしてできること。

――今回のプロジェクト自体がもともと福岡市の公募案件だったということですが、その公募案件の企画の意図は何でしょうか?

佐久間:元々は、九州大学と連携した次世代研究開発拠点を創るという公募案件にCCC が主体として公募案件に手を挙げたのではなく、地元大手ガス会社のグループである西部ガス都市開発様と、大手デベロッパーである大和ハウス様が、この案件に企画提案するにあたって、重要な要素として、ぜひ「蔦屋書店」を出店してほしいとご相談いただいたというのがスタートでした。

「次世代研究開発拠点」に求められている機能は4つ。1つ目が研究開発、2つ目が交流機能、3つ目が居住機能、4つ目が生活利便機能です。つまり、単に研究開発の拠点だけを作っても人は集まらないと考えており、人が集まる仕掛けも備えています。人が集まらなかったらイノベーションが起こらないので、研究開発施設に人が集い、交流する場になるという役割を蔦屋書店が担っています。

――施設のコンセプトはどのように作り上げたのでしょうか?

佐久間:施設全体のコンセプトを決めるまでには、企業の枠を超えて考え、企業間で様々な案を出し合いながらアップデートを重ねました。
施設を「いとLab+(いとらぼぷらす)」と名付け、コンセプトは、“知と感性と創造を育む「結び目」となる拠点”としました。

 

――施設自体のコンセプトや企画は協業企業含めて進めたということですが、他社と協力しながら進める際に大変だった点はありましたか?

佐久間:CCCに求められていたのは、「コンセプトを作ること」や「どういう場所で、どういうものが求められているから、 こういう企画をしましょう」という、全体のアウトラインを描くことです。「こういう形はどうですか?」と何度も提案しながら、議論し、意見を出し合って決めました。ただ、やっぱり最初に店舗コンセプトの草案を作る際はなかなか大変でした。

――蔦屋書店のコンセプトは、その後どのように検討されたのでしょうか。

佐久間:書店のコンセプトづくりは、2021年度から始めて、1年3ヶ月くらいかかりました。事前にアンケートを300件以上集め、地域の方々にも300回以上お話を聞き、コンセプトと店舗企画を創っていきました。

:地域の方に話を聞いてみると、この地域はそこまで大きく栄えている街というわけではないことが分かりました。さまざまな世代の方々が暮らしている地域の中に、九州大学が存在しているという特徴がありながらも、「九州大学とつながりや連携がない、というところがもったいないよね」という意見をいただいていました。
また、九州大学からも「地域の人とつながっていろいろなことをやりたい」という話も聞いていたので、 地域と九州大学の架け橋にならなきゃいけないというのは企画段階から強く感じていましたね。

――実際に、どんな客層に向けて、どんな企画を実施されていますか?

村上:客層としては近隣に30~40代のファミリーが多く住んでいることもあり、メインターゲットに設定しました。子ども連れのお客さまが多いため、児童書は地域でナンバーワンの品揃えです。
サブターゲットである、九大生(九州大学生)や、研究者の方に向けては、専門書に特化しています。

今後夏休みシーズンに向けて、絵本の読み聞かせや、九大生が地域のお子さんに学びを与える勉強会を開くイベント等を計画しています。

――素敵ですね! 夏休みシーズンは、子どもたちの自由研究等を九大生がサポートするのもすごく楽しそうな気がしました。

村上:そうですね、テラスもあるので、小さな手作りロケット等を飛ばすなどの企画ができたら面白いなと考えています。九大生や地域の人たち、子どもたち、地元のご年配の方々が交流している風景が生み出せたらいいなと感じています。



オープンしてからの想定外だった出来事。

――もともとのメインターゲットは、30~40代のファミリー層と、九大生等とのことでしたが、実際はどのような方々がお越しになっていますか?

佐久間:お客様は想定よりも広域からいらしていただいており、博多区や佐賀県からも足を運んでいただいています。施設全体に興味を持ち遊びにきてくださる方や、糸島へのドライブ帰りに立ち寄ってくださる方などもいらっしゃいます。


村上:留学生も想定以上に多く、外国語関連の書籍の問い合わせが多かったり論文に必要な洋書等が求められていたところが予想外でした。
また、周りに小学校が開校したことも影響して、特に週末はお子さまが多いです。
逆に九大生の来店が想定程多くないところは驚いたというか意外だったなと。

今後、対面授業も再開するということなので、九大生の方にも沢山利用していただけるのが楽しみです。

「九大伊都 蔦屋書店」として、今後作り上げたい未来とは。

――施設として、今後目指していきたいことはありますか?

佐久間:私は、店舗コンセプトとミッションは別のものと考えています。「九大伊都 蔦屋書店」は、「未来に紡ぐ書店」というコンセプトで、人と人とがつながる場所にしたいという目標を一番に掲げています。
お客様にとってはこの店舗を通して、地域の方々同士がつながれる場所、自己表現ができる場所になるというのが1つ目のミッションと思っています。

次に、ステークホルダーである多くの協業企業様や同施設に入っている他テナント様とともに「いとLab+」全体を盛り上げ、「CCCと一緒に、蔦屋書店と一緒に仕事をしてよかった」「また、新しいプロジェクトや企画を一緒にやりたいね」と思っていただくことが2つ目のミッションです。

最後は、何より一緒に働くメンバーが、「このプロジェクトに入って、一緒に施設を運営することで、自己成長できた。」「ここでの経験が、本当に自身のキャリアに生きている。」 と感じ、関わるメンバーの成長に繋がること3つ目のミッションとして実現したいと考えています。

 

――ミッション以外で今後チャレンジしていきたいことはありますか?

:店舗としては、地域の方々や九州大学のみなさんと連携し、地域の方にも、大学の方々にも、協業企業様にもみんなに喜んでいただける企画や商品開発をしたいと感じています。

また個人としては、自分自身がちょうどこのプロジェクトに参加している間に子どもが生まれ、プライベートにも大きな変化とかもあったので、もっと子どもたちが楽しめるイベントをどんどん企画していきたいなと考えています。

自分の中ですごく印象に残っているのが、オープンして最初のお客様として小さいお子様が一人でバーッと店内に入ってきて、「おぉ、すごい」と一言だけ言ってバーッと走っていったことがありまして。子どもの思い出に残るというか、子どもの心に楽しく遊んでいた記憶が残るようなお店にしたいなと思っています。

村上:九州大学では九大祭という学園祭が秋口にあるので、蔦屋書店と何か連携してお祭りみたいにできたら面白そうだなと考えています。また、私自身はBOOK担当としてニッチなフェアを企画してみたいなと思っています。

 

子育てファミリーも、九大生も。それぞれのお客様に寄り添った店舗づくり

――最後に、みなさんが推したい、店舗の見どころはなんでしょうか?

:「九大伊都 蔦屋書店」のシンボルである高さ5メートル程の書棚は絶対に見てほしいです。
また、キッズスペースや授乳室にもこだわりました。僕自身、子どもが生まれてから子育てに奮闘しており、オムツ替えスペースの設計も「こうやったらオムツ替えが楽だな」等、自分なりに考えて細かく配置をしました。
CCC内でお子さまがいらっしゃる方々にもアンケートを取って意見を集約して作りました。

圧巻の高さ5メートル程の書棚

佐久間:お父さんがひるまずに入れるオムツ替えスペースです。ミルクを作ったりする場所はオープンにしながら、お母さんとお子さんが入る授乳室はプライバシーが保たれるように、扉をつける場所を従来の場所と変えるなど、
育児中の方の声を反映して、管さんが設計図に落とし込んだのですよね。そのような細かいことの積み重ねがいい企画につながると思います。

また、子育て世代やお子さま、そして研究者の方や学生が同じ店舗にいらっしゃいます。相反する客層をこの店舗の中でどのように共存させるかというところは検討しました。
解決策としてワンフロアの店内を左右に大きく分け、家族連れで楽しんでいただきたいエリアと、大学生や研究者の方など集中したい方が使うエリアを分けました。

一方ではお子さまが遊んでいるスペースがあり、一方のスペースではアートのイベントが行われる等、それぞれ違う層のお客様の居心地が良いように設計しました。

オムツ替えスペースの奥に授乳スペースを設計した、こだわりのベビースペース


村上:地域の方々や、九大生にアンケートやグループインタビューをした際に、他の人のレコメンド本を知りたいという意見が多かったので、「選書企画」というコーナーを設けています。
九大生や先生、地域で活動されている方々に声掛けをし、テーマを決め、そのテーマに沿った本を選んでいただくというコーナーです。
九州大学の石橋総長をはじめ、様々な方にご参加いただいており、「九大伊都 蔦屋書店」からのお勧めだけではなくて、様々な方々からのおすすめ本もぜひご参考にしていただけたら嬉しいです。

九州大学の石橋総長をはじめ、様々な方に選書いただいた本が並ぶ選書棚