本は手に取られないと意味がないーキカクノキッカケ

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企画会社CCCがこれまで手がけてきた企画の数々。

そんな一つひとつの企画の裏側に隠された「一人のアイデアがやがて事業へと成長するまでのストーリー」に光を当て、お伝えする「#キカクノキッカケ」。

今回は、本を通じて自分がまだ知らない世界を知る喜びを伝える企画、「読書の学校」を生み出した三砂さんのインタビューを、21卒内定者がお届けします! 

今回のキカク人

三砂 慶明さん

大学卒業後、出版社、文房具店勤務を経て、2014年にCCCへ入社。入社後は、梅田 蔦屋書店の立ち上げプロジェクトに参画、その後、同店でコンシェルジュとして人文書やビジネス書を担当、選書やイベント企画業務に従事している。

ごはんはみんなで一緒に食べた方が美味しい。読書の感動だって誰かと共有すればいい

――三砂さんが本と深い関わりを持つようになったのには、どのような経緯があるのでしょうか。 

映画でも、音楽でも、私は体験を通じて、今まで経験したことのない、知らないものに触れることが大好きです。今までの生活を振り返って、もっともそのような「未知」を「既知」に変えてくれる体験をさせてくれたのが「本」でした。

たとえば、歴史家の藤原辰史先生のご著書に『食べるとはどういうことか』があります。この本は、中高生と藤原先生が食に関して真剣に議論する食と農業の哲学対話です。読んでいて驚いたのは、私はこの本を読むまで、食べ物の美味しさは「味」だと考えていました。しかし中高生たちとの議論で、今までの自分の当たり前の思考が、あっさりとくつがえされました。美味しさの統計をとって、背景を分析していくと、日常のまったく別の側面に力強い光が当てられるのは感動的でした。

携帯のアプリのような、読むとスキルが身に付くような実用書もよく読みますが、ときどき、ハードのOSそのものを変えられてしまうような、濃縮した時間が人文書には込められていると思っています。

学生時代は、自分が楽しければいいと思っていました。でも、一人で食べるご飯より、恋人や家族と一緒に食べるご飯って、より美味しく感じませんか? あるとき、「それって読書も一緒かもしれない。」と思いました。読書をするのは一人ですが、読むことを通じて、必ず、誰かとつながっています。著者や編集者、それを作ったり届けたりする人。さらには、時代や国を飛び越えてまったく別の場所で同じ本を読んでいる誰かと、本を介してつながっている。その面白さを一緒に話し合えたら、読書の感動がより深まっていくのではないかと考えるようになりました。

本を介して読むことの喜びと体験を伝えられたら、こんなに面白いことはないだろうと考えて、書店員になることを決意しました。

まじり気なしの本物の知と、どうすれば出会ってもらえるか

――読書を通じた喜びを伝えたいとの想いで書店員となった三砂さん。知られざる人文書の魅力を紹介する企画「読書の学校」ですが、書店員になる前から人文書の担当を志望されていたのでしょうか。 

もともと私は文学志望でした(笑)。競争率が高く、最初の方であえなく落選してしまいました(笑)。採用してくれた上司が、文学は人文ジャンルだからね、と言われて人文書の担当になりました。やってみたら、やっぱり全然違いました(笑)。ただ、担当させてもらって本当によかったと心から思っています。担当になって棚にある本を一冊一冊読みました。もちろん全部は読めませんが、読んでみて、なんて素晴らしい本たちなんだと静かに感動しました。

人文書は高価で専門的な本が多く、とっつきにくそうですが、読んでみたら全然違いました。寡黙に見えて饒舌で、読みはじめると止まりません。

エーリッヒ・フロムの『愛するということ』は、中学生のときに、懸田克躬訳で読みました。そのときはよくわからなかったのですが、担当になって鈴木晶先生の新訳で読み直したとき、私は、はじめて愛が学べるものだと知りました。1956年に出た本ですが、むしろ現代人の方がこの本を必要としていると考え、入社以来ずっと、この本を大切に紹介しています。

人文書は、書かれている内容が素晴らしいのに、なんていうんでしょう。とっつきにくさのせいか、重厚な扉が閉まっているような感じがします。読者が限られている本も少なくないので、少なくとも、この扉を半開きにして、まじり気なしの本物の知に出会ってもらうにはどうすればいいのか。出版社の方や、先輩たちに質問しながら考えはじめたのが、この企画のはじまりでした。

そうして生まれたキカク、「読書の学校」

「人生で本当に向き合わなければならない場面でこそ、人文書はその真価を発揮する」と話す三砂さん。そんな人文書と、それを必要とする読者を繋げるべく「読書の学校」は開講された。組織の垣根を超えて、出版社や他社の書店員を巻き込んで繰り広げられるこの企画は、毎回のテーマに沿ったトークイベントの開催や、おすすめの書籍がリストアップされたリーフレットなどを通じて、読者に様々な人文書を紹介する。三砂さんは、読者と一冊の書店での思いがけない出会いのきっかけをつくることで、「知らないことを知る」喜びを多くの人に届ける。

「人生で上手くいかないことがあったとき、人は本を読む。」

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人生って、上手くいかないことが多くないですか? あれ、私だけですか(笑)。

コラムニストの山本夏彦は、健康な人は本を読まないと書いていて、私もそうだと思っています。人生に何も問題がなければ、本を手に取るきっかけって、ないような気がします。自分の人生で考えてみても、本当に向き合わなければならない何かとぶつかった時、本を読むことで、視界が開けたり、ヒントや励ましをもらってきたような気がしています。

「読書の学校」には、そんな一冊との出会いをお客様にも体験してもらえたらいいなと考えてはじめました。本のジャンルやカテゴリーではなく、その本を本当に必要としているのは誰なのか、という軸から、出会った人の考え方を変えてくれるような本との出会いが提案できれば、と考えています。

企画名を「読書の学校」としたのは、スターバックスコーヒーの店長と一緒に読書会をやっていたときに、お客様からヒントをもらったことがきっかけです。「なんか、三砂くんがやりたいことって、読書の学校みたいだね」と話しかけてもらって、確かに、と思いました。

かつて作家のオスカー・ワイルドが、欠席することが罰になるような学校があればいいのに、と書いていました。行きたくて休むのが罰になる学校。私にとってその学校は、読書でした。

「読書の学校」は、開店当初から形を変えて、ずっと続けています。本を読む楽しみや本の魅力を、本棚を通して、少しでも伝えられたらと願っています。

近々、本を紹介するだけでなく、本を作ることにも挑戦するつもりなので、ぜひ、楽しみにしてください。

自らの興味をとことん突き詰めて、仕事にしてしまう仲間たち 

――最後に、CCCのメンバーについてどんな印象を抱いているか教えてください。 

一緒に働いていて、尊敬する人が多いです。

村上春樹のスペシャリストで、村上春樹の著作をお客様と一緒に読み続けている同僚や、SGDsの大切さを一早く店舗の企画に落とし込んで実施するだけでなく、金沢にまで資格を取りに行ってしまう人がいたり。最高の黒胡椒を探し求めてカンボジアまで仕入れに行ってしまう同僚や、写真コンシェルジュが本物の写真家だったりと、中途半端ではなく「あ、そこまでやっちゃうんだ。」って人が多いのも、CCCらしいところだなと思っています。CCCのメンバーはいつも良き仲間であり、負けたくないライバルです。